整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

修理から廃車に変更後音信不通


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 1つや2つ、似たトラブル例を知ったところで新しいパターンは引きも切らない。

 ローンが残っている、残っていない。使用者の名が本人である場合に限らず、まったくの他人で印鑑証明の取りようのないこともあり、わからないことは山ほどある。

 その都度調べて伝えるようにしないと、可能性だけで先に調べることなど不可能だ。

 

2ヶ月くらい前になるが、キャリアカーで輸入車が持ち込まれた。 もちろん修理依頼だが、症状を聞き取り、概算見積もりを伝えてから作業にかかるという約束で車を預かった。 他の仕事もあり、原因究明に数日かかった....
 

 

2ヶ月くらい前になるが、キャリアカーで輸入車が持ち込まれた。

    もちろん修理依頼だが、症状を聞き取り、概算見積もりを伝えてから作業にかかるという約束で車を預かった。

 

    他の仕事もあり、原因究明に数日かかった結果、エンジン本体のダメージが思った以上に大きく、オーバーホールをした上での修理見積金額(輸入車なので正直なところ結構な金額)をユーザーに提示(電話連絡)したところ「しばらく考えさせて欲しい」ということで連絡を待った。

 

    一週間程経過し「修理はしない。廃車にする」との連絡があった。

   

    修理依頼が廃車依頼に変更されたので、信販会社の所有権がついていたことから、廃車にするための必要書類を説明。

    廃車にしてくれというからには当然、ローンは完済しているものと思っていたし、依頼者=使用者だという点に疑いはなかった。

 

    ユーザーは「近日中にすべて揃えて持っていく」といったが、この連絡を最後に一切連絡がとれなくなった。

    何度電話をしても電話には出ないし、車検証の表記住所にいっても誰も住んでいる形跡がない。

 

    携帯電話の番号しか聞いていないので他に連絡をとる方法がなく、現在は音信不通。

    もともとが修理で預かっており、廃車依頼も口頭のみ。

    先にも書いたが使用者は、持ち込んだ本人だと思われるものの、実際は不明。

 

    この車、結構なスペースを占有しているのでナンバーを外し、このまま産廃業者に渡して廃棄処分にしても問題ないか?という問合わせ。

 

    「廃車依頼の証拠はあるか?」

    「修理で預かり、電話で廃車依頼に変わったため書面での証拠はない」

 

    所有権が留保されている車でもあり、いきなり廃棄するのはあまりにも無謀。

    廃車手続きを行ってからの廃棄になるが、信販会社も使用者の許可なく所有権解除の依頼には応じないだろう。

    預けた使用者(と思われる人物)と連絡が取れるように努力し、取れなければ最終的には専門家に委ねることになる。

    そうなると金銭的にも負担は大きくなり、処理期間も長引く可能性が高い。

 

    「路上に出すのはどうか?」

    路上等に放置すると、御社に預けた事実があり、ナンバーがついたままなら御社が道交法違反(駐車違反)になる。

 

    「ではナンバーを外して放置するのはどうか?」

    それも同じで御社が産業廃棄物処理法違反(不法投棄)になる可能性がある。

 

    自動車は産廃ではなく、リサイクル法に則って処理されなければならないので御社が『引取業』の許可を失効していないという、前提での話だ。失効していたらさらに面倒なことになると思ったほうがいい。

 

    本人の所在がわからない今、電話連絡や書面通知などは全て時系列に並べ、いつでも事情を説明できるようにしておく必要がある。

    事の成り行きは所有者である信販会社にも連絡し、情報をもらう努力も重要。

 

    また、別件だが、「入庫時はエンジンがかかっていた」とか「預けた車に傷がついている」というようなクレームに発展したケースもある。

    この預り車両の扱いは必要以上に注意し、くれぐれも軽挙妄動は避けてほしい。

 

    その後、信販会社に事業者からことの顛末を説明し、情報を引き出そうとしたところ、使用者が『ローン未払い』であるという情報を聞き出した、と連絡があった。

 

    この場合は、所有者として信販会社がこの車を引き取ることになるはず。

    いわゆる、借金のかたということになる。

 

    万一、「俺の車はどこにある?」と使用者がやってきてもローンの支払いがない車なので所有者である信販会社が引き上げたという言い分が成り立つらしい。(当方も知らなかった)

    どうしようもないといえるようだ。

 

    今回は、所有者が車を引き揚げたのだから不謹慎だがギリギリのところでこの車を抱えこむことにならないで済んだ、とは事業者の弁である。

 

    こんなことがあれば、事業者は今後、安易に車を預からないでおこうと考えてしまうところだが、この事業者が事業を展開している地域は固定客が少なく、一見客が多いという。だから、一見客だからといって修理を断ったりすれば商売が成り立たなくなる、とのこと。

 

    専門家にも聞いたが今回のようなことは「非常に難しいことながら、実はよくあることらしく、最終的には事業者側が損をする確率が高い」のだとか。

 

    今回はローンが残っていたから信販会社に引き取ってもらえた(本当なんだろう)が、ローンがなければ自社持ちで処分することになり、大変な労力と資金が必要になっていたと思われる。(具体的なことには触れられない)

 

    自分の身を守るためにはある程度自己防衛のために人を見極める努力も必要になるということか。

 

    ところで今回の件だが、あとで事業者に連絡をしてみた。

    すると「もう関係ないし、知らない」という答えが返ってきた。

    これくらいドライに物事を考えられたら気も楽かもしれない。