整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

好意を仇で返される

 

 特別懇意でもないユーザーからの依頼で、その修理後に中途半端なことを頼まれたのがことの発端。

 

    まずはユーザーの苦情

     自損事故を起こし、割れて歪んだ部品を交換してもらった。

    素人目ではあるが割れも歪みもわかりにくかったので(交換した)部品を持ち帰って自宅に保管し、再利用したかったが、自宅では邪魔になるので交換してくれた事業者にしばらく預かっておいてほしい、と保管をお願いしていた。

 その部品を先日、受け取りにいったら「廃棄した」と言われた。

 預かると約束しておいて持ち主の許可なく勝手に廃棄することなど考えられない。

    廃棄された部品の損害賠償と慰謝料を払うよう要求したが対応しない、という苦情。

    

 

 

    いくら請求したのか気になるところだが、事業者にも話を聞いてみる。

 

    事業者の話

    自損事故をしたユーザーから部品交換を依頼されたのは1年以上前。

    交換後、廃棄するものだと思っていた部品をユーザーから「しばらく(事業者はその後数ヶ月と思っていた)預かってほしい」と頼まれた。

    なんでも「大きく壊れた時に一時利用したい」ということだった。

 しかし、「これはもう使えない(割れると補修できないし危険)」と散々言ったが、とにかく預かってほしいというのでめんどくさくなって渋々預かることにした(事業者曰く、ここが中途半端だと)。

    それから半年近く経ったがなんの連絡もなく、小さな部品でもないので邪魔になり始めたことから廃棄することにし、連絡をしてみたがまったく連絡が取れない。何度も何度も電話したが、折り返しの連絡もなかったので結局、連絡が取れないまま部品を廃棄した。

 

    そのユーザーが先日、1年以上ぶりに突然やって来て、「部品はあるか?」と持ち帰るわけでもなく(ここがユーザーの言い分とズレがある)、確認だけをしに来た。

   「半年近く預かり、再三引き取り連絡をしたが折り返しの連絡がなかったので廃棄した。預かるときにも説明したが部品は、再利用出来る状態のものではなかった。1年以上経って、あるかと言われても…」等を伝えたところ、「約束を違えた。損害賠償(部品代)と廃棄したことに対する慰謝料を請求する」といい始めて困っている、と。

 

    双方の話は微妙に違う(よくあること)が大枠では差がない。

 

   

ユーザーには

 ・部品は再使用不可能と聞いている。

 ・基本、物損に慰謝料は発生しない。

       (そもそも物損といえるかどうか)

 ・それほど親しくない事業場に、無償でお客様の都合により部品を預けた。

    ・連絡せず、連絡があっても返信せず長期の放置。

 ・預かりは口約束で預かり証も受け取っていない。

  

 事業者には

 ・話はわかるが、現金決済で交換したなら交換した部品の所有権はユーザーに。

 ・この時点では無価値であっても産業廃棄物というわけでもない。

    ・ユーザーに無理強いされたとはいえ仮にも預かった部品、連絡取らずに廃棄するのはいかがなものか。

    

 損害として、部品の金属としての価値相当額は見込まれるかもしれない。

 逆に、好意であっても保管場所は使っているわけで、それを仮に10円/日の保管料で換算しても、1年で3650円の損害(あくまでも仮定での話し)

 この辺りで相殺されそうな気もする。

(新品部品代金が2万円程度で勝手にはじき出した個人的見解なのでなんの根拠もない)

 

    保管料に関しては、置いていたことの立証や預かる際に有償になる旨告知する必要もある。また、有償であれば請求そのものが問題になる可能性も。

 

   だからといって金額的には専門家に委ねる価値はない…と思う。

 そういうわけで、双方に(主には事業者に)もう少し話合うよう促してみた。

 

    事業者はもう一度話をするといっていたが、ユーザーは損害賠償しか言わないので「話し合いで解決しようとしないのなら専門家に委ねてください。私もこれ以上の対応はいろんな意味で無理です」といって専門家に委ねた場合の具体的な費用の話をして終えた。

 

 ちなみに保険で支払われた場合は、その部品の所有は保険会社のものなので保険会社から廃棄を依頼(全損車両なら引き上げることもある)されて廃棄するのが本来の形。

 実際は、現場での話なので信頼関係もあり、暗黙の了解がまかり通っていると思う。

 

    廃棄部品で保険会社と揉めることはなかなかない(耳に入らないだけでそこそこあるとは思う)が、全損となると揉めることも少なくない。

 その車や部品の所有権が誰にあるか、少なくとも事業者にはないはず。