整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

日本茶 ⑥ 毅然と故障探求料

 

 

    相談してきたのは使用者の父親。

    ギアが入りにくいと、息子(使用者)が整備事業者に持ち込んだ(輸入車)が、不具合箇所を調べるのに3日もかかり、その上、「ミッション内部の部品交換に20万円もかかる」と言われた。

 一旦引き取ると言うと1万8千円もの見積り代と称した請求をしてきた。

 たかが見積りに3日もかかり、その上、18000円も請求してきて、ぼったくりではないか!、と。

 

    それを私に言われても困るが、一応、事業者に話を聞いてみる。

 

 

    車は他府県からネットで購入した中古車。

 今回、初めてこの事業者に入庫した、らしい。

 

    色々話を聞くと、故障内容はミッション内部(バルブユニット)で、当然、最初は外部から見るだけでは判断出来ず、専用テスター等を用いて故障個所を特定したそうだ。

 

   使用者には「壊れているのはミッション内部で、故障箇所を特定するためにはミッションを脱着・分解し、油圧機構内部(バルブユニット)を確認する必要がある」旨、伝え、了解を得て作業した。

 

    原因は、オイル循環経路の内部漏れだとわかったので修理するならバルブユニットの部品代17万円と工賃2万5千円の見積もりを出した。

 

    ここで依頼者は、「車は乗れるのでいったん引き上げ、お金が出来てから修理する」と言ったのでミッションの脱着分解作業で撮った写真と点検・診断内容を説明した上で、今回の作業工賃として1万8千円を請求した。

 

     作業は依頼者の要望で行い、作業内容もキチンと説明した。

    請求書と修理の見積書(写真も添付)を交付して本人に手渡すと本人は納得していた。

 

    その父親は何が問題だと言っているのか?

 

    クルマは登録後3年半の比較的新しい中古車だが、弊社が販売したわけでもない。

    まだ新しく、走行距離も少ないが、メーカーの保証期間は過ぎていた。

 

    バルブユニット内部の破損はPL法の対象かもしれないが、それが欠陥だというなら立証責任はユーザーにあり、メーカーと争うのもユーザー。

    ユーザーが争うのは勝手だが、弊社は無関係。

 今回の作業費用は払ってもらわないとクルマは渡せない・・・(至極当然)、と。

 

   

 診断等にミッションを脱着し、分解して原因の究明まで行っており、労力も時間もかかっている、弊社としてはまったくもって正当な請求だと考えているが?

 

 うちの見積もりを他社に持って行って修理に活用することもできる。

   クルマはまだ弊社にあり、また来社されるはずなのでもう一度本人には説明する。

 

 今回の金額は、修理するなら請求時に合算してある程度相談にも乗れる、とのこと。

 

    以上の内容を相談者に伝えたところ、「作業が済んでから請求されても納得できない。このような慣習が整備業界ではまかり通るのか?」と業界批判。

 

    自動車製造物責任センターや公正取引協議会にも連絡したと言っていたが、クルマを預けたのは成人しているご子息。

   

 その本人が納得していているのに親が出てきて苦情?

 これではまとまる話もまとまらない。

 

    当方も口を挟めない(てか、そんな気もない)、というと電話を切られた。

 

    後日、息子は素直に見積り料を支払い、車を引き上げ、半年以上経過してから症状が如実に現れるようになって修理した。