整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

書類無条件送付は是か非か

 

 14~15年前、所有権を自社名に留保し、使用者をユーザー名義にして軽自動車を販売した。

 先日、この車が他府県の駐車場に放置されているということで、その駐車場の関係者(と思われる)を名乗る『○○ガレージ』という会社から「車両を撤去(移動・廃棄)したいので所有権解除をするための書類を送ってほしい」という文書と所有権解除のために必要な書類一式及び、その駐車場であろうと思われる場所に駐車(放置)されている状態の車の写真が送られてきた。

 ユーザーはローンを完済しており、所有権を解除する書類を送ること自体はやぶさかではないが、必要だと言っている書類を送り返していいものかどうか先に聞いておこうと思って電話した。教えてほしい。

 

 書類を送ってきたのは『○○ガレージ』という名称だが駐車場経営者かその駐車場所を借りている中古車店かよくわからないという。

 

 使用者が行方不明で連絡が取れないらしく、それを理由に、所有権を留保している相談事業者にその書類を送ってきたということだ。

 しかし、依頼者が使用者でないことだけは間違いなさそうだ。

 

掲載してから1ヶ月以上経過したので続きは以下に移動しました

https://note.com/carrot3/n/na5f69cf50099

 

 使用者が所有権解除の事実を知っているなら問題ない(要は使用者からの依頼)が、使用者が知らないとしたら、第三者(この場合、書類を送ってきた事業者)の依頼で書類を送付することになる。

 

 軽自動車は所有権を解除すると使用者の名義を変えることはたやすく、14~5年前の車で車両評価額がないと仮定しても、使用者に無断で所有権解除をする書類を第三者に送ることは避けたほうがいいように思う。

 

 送られてきた封書のことを聞いたところ、住所は書かれているが電話番号の記載がないという。

 これは電話連絡できないということ。これも問題。

 

 書類を送ったあとそのどこのだれかよくわからない事業者と連絡が取れなくなる可能性もある。

 名義を変更された後、使用者から「俺の車が誰かに売られた。勝手に所有権を解除したからだ」というような苦情を抱え込む可能性もある。

 

 何もかも可能性の話だが、それにしてもリスクが高すぎる。

 御社に悪意がなくても最悪、盗難の片棒を担ぐことにもなりかねない。

 

 ついでに言うなら、先方が不法駐車で困っていることと軽自動車の所有権解除は別の話なのに、書面のニュアンスからだとさも移動するために所有権解除しなければならないように読み取れる。なんらかの意図があるようにしか思えない。

 

 相手から電話連絡でもあれば、「不法駐車で困っているのは気の毒だが、車両の移動は本来、土地所有者が行うべきもの」と教えてあげるのがいい。

 どうしても移動したいのなら使用者相手に移動をしてもらう裁判を起こすのが筋。

 金銭的にも大きくなるがそれは御社には関係のない話。

 

 例えば仮に相手が裁判を興し、相手弁護士から所有権解除の依頼があればそこで初めて応じることになるが、その時にも所有権解除と不法駐車の関係をキチンの聞くのがいい。その形になれば使用者が何を言ってきても対抗できる。

 

 現状、その車は御社の持ちものではなく、所有権を留保しているだけ。

 何度も言うが、書類を送ってきたのもどこのだれかわからない。

 手紙一通で何もかも出来る書類を送ることは危険。書類を送ることは一考したほうがいい。