整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

タイヤの保管で注意したいこと

 

    先日、「ある会合で、長年預かったままで連絡のなかった客のタイヤを処分してトラブルになった」という話を聞いて相談させてほしい、という電話があった。

 まあ、トラブルではないということなので参考程度に話の内容を聞いた。

 

 

    当地域のユーザーはシーズン毎にタイヤの入れ替えを行う。

    ユーザーが冬用タイヤを使っているときは夏用を、夏用タイヤを使っているときは冬用タイヤを当社が預かっている。

    だから倉庫の中は、常にどちらかのタイヤがある。

 スペースは当社が『お守り』する車の数が増えれば増えるが、田舎なので極端には増えない。

 

 形としては無料で預かっているが、当社では交換時に工賃をもらうようにしている。

 タイヤで顧客の囲い込みを行っているようなものだが、お互いその意識はない。

 

 工賃ではない事業場もあるようだが当社の話ではないので控えておく。

  

    当社顧客数は、車検台数ベースで250台/年ほど。

 そのうち、1/5の顧客のタイヤを預かっている。

 したがって、2年で考えれば500台、そのうち100台分の400本ということになる。こういった状況で無断廃棄以外に注意することがあれば教えておいてほしい。

 

 なるほど、そういうことか。

 

    タイヤの預かりに関係しそうな法律なら倉庫業法「消防法」くらいか。

    いずれにしろ専門家ではないので本当に、参考程度に。

 

    倉庫業法は金銭の授受にかかわりなく人の持ちものを預かる事業。

 自動車のタイヤを預かれば該当しそう。

 しかし、『修理等役務により保管する場合は適用除外になる』とも書いてある。

    タイヤの交換が修理に該当するかどうか、疑問もあり、さらに調べると『その他の役務等営業のあとに付随して自ら行う当該役務の対象となった物品を保管し、他の営業と同一敷地内に置いて行われる保管であること』という文言があった。

 

    勝手な解釈だがこれなら自動車整備事業者がタイヤを預かっても倉庫業の資格を必要としないように思える。

 タイヤ預りを仕事として受け入れるなら相談したほうがいいかもしれない。

 

 

    次に消防法だが、タイヤは「指定可燃物」で指定数量は3,000kg。

    これを超える場合(の貯蔵)は、最寄りの消防署への届出が必要。

 

    単純にタイヤ1本を10kgとすれば、1台分で4本×10kgで40kg。

 それが100台なら4000kg。

    この計算でいくと届出は必要か。

    

 ただ、軽自動車もあるし、ホイール付き、ホイールなしでも変わる。

 

 こんな単純計算で届け出云々は言えないが、タイヤは屋上・屋外での保管が原則的に認められていないということもあるので、本数が多いなら近隣の消防署に聞いてみたほうがいい。

 

   蛇足だが、消火栓や消防設備は3,000kg×750(施行令による基準数値)になると必要になるのでタイヤだと2,250t。

 通常、自動車整備事業者が扱う数量ではないからこれは不要。

 

 結論的には預かる数量によって注意することもかわるということか。

 

 異業種が集まる会合などで運送業や消防関係者などが来ているときに人脈を広げて聞いてもいいのではないか。

 

    ところで、預りものを依頼者に無許可で廃棄する話だが、トラブルを防止するため、預り証を発行し、期間を決めて長年入れ替えずに放置された場合は廃棄する旨を記し、合意した文書を残しておけばそうそうトラブルにはならないと思う。