整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

日本茶 ⑩ 和解契約書と保険支払い

 

    

 

    事故修理で預かった車(当社ユーザー)の納車が済んだ。

 

    ところが本人が、相手との過失割合に納得せず、保険会社が提示した和解契約書(示談書)に押印しないので当社が保険会社からの支払いを受けられず困っている。

    保険会社に支払ってもらうにはどうしたらいいか、と。

 

    "保険会社に支払ってもらう”という意識から考え直した方がいいかも知れない。

 

    過失割合は本来、示談交渉の中で当事者同士が決めるもの。

    しかし、実際に当事者同士だと素人でわからないことも多く、また、感情的にもなりやすいということもある。

 特に田舎にいくと顔見知りも多く、様々な問題が起きやすいので(あえて触れない)保険会社が代わりに「示談交渉」を行い、その交渉の中で過失割合を決める(ことが大半)。

 

    ちなみに任意保険加入率は全国平均が75%くらい。沖縄は50%位だから、沖縄でレンタカーを借りるときは頭の隅に残しておいた方がいいかも。

    もっとも、共済などのデータが入っていないらしく、実際はもう少し加入率は高いと思う。

 

    それはさておき、保険会社はこれを無償で行う体を取り、それを便宜上、『示談交渉サービス』といっている。

    ここに普通、第三者は入れない。

    細かいことをいうときりがないけど一言でいうなら、保険会社の都合と様々なトラブルを避けるためだが、したり顔で『無償』を条件に“委任された”と親戚や兄弟が話し合いの場に出てくることがあるが、相手が示談交渉人と認めたら交渉する余地はあるけど、これも避けた方がいい。

 当事者ではないので‟たら・れば”の話や仮定の話がないまぜになってさらに大きく揉めるのは、示談交渉‟あるある”といえる。

 

    本人以外で入れるのは弁護士だけ(有償)と考えた方がよさそう。でも弁護士を入れるとお金がかかる。だから弁護士特約は、今や加入必須だというわけだ。

 

    弁護士は保険会社も紹介してくれるが私は勧めない。どうしても寄るから(笑)

    保険会社と契約してるから仕方ないけど。

 

    事業者でも知らない人が多いのは「100:0の過失割合でも弁護士が使える」こと。

    揉めたときだけ弁護士が使えると思っているユーザーは多いが、事業者も多い。

 

    示談交渉サービスは保険会社にとっても都合のいいことが多い。

    ここでもその事には触れない。(こんなことはわかる人にわかればいい)

 

 一般的に事故は、犯罪等の刑事事件ではなく、民事なので警察が介入しないのはそういうこと。

   

 今回はユーザーのわがままだが、基本的なことを言うと事業者はこのユーザーから修理依頼をされて行った、はず。

    保険会社が「かかっていいと言ったから作業を始めた」という事業者もいるが、修理をお願いしたのは依頼者で保険会社は依頼していない。

 

 もう少し突っ込んで書くと修理代金を支払うのは修理依頼者だということ。

   1、依頼者(被害者)は相手(加害者)に被害金額を請求。

   2、加害者は被害者に保険金を支払うよう、保険会社に依頼。

   3、依頼を受けた保険会社は見積金額に協定し保険加入者(加害者)に支払う。

   4、加害者は保険会社から受け取った保険金を被害者に支払う。

   5、被害者は受け取った弁済金(保険金)を修理してくれた事業者に支払う。

 

 これが本来の流れだが、これがめんどくさいので、便宜上、保険会社が作業を行った事業者に直接支払う(赤字部分)ようになっている。と考えたらわかりやすいかも。

    

    これを見ると、本来の請求先が保険会社でないことがわかると思う。

 

    その修理依頼者(被害者)が過失割合に納得せずに支払いを滞らせていることと、御社への支払いを滞らせることとはリンクしない。

 

 要は、御社には何の関係もないこと。

 

  依頼者の勝手なわがままであり、自己都合。

  押印がないのだから保険会社も支払わないのは当たり前。

 

  でも 御社は示談交渉に入れず、支払いだけが滞る。

 そこで冒頭のような ”保険会社が払ってくれない” という考え方になる。

 

    したがって、普通にユーザーに請求すればいいのではないか?

  こういう時のために、修理を請け負ったときに「保険で支払われない場合は立て替えて支払う」旨記した誓約書のようなものを作っておけばいいと思う。

 

    支払いが遅れたら何%か遅延利息も請求出来る(あまり勧めないが)し、貸金業の資格をとって利息制限法の範囲内で、とか考えるとおもしろくなるんだが(笑)

    話の趣旨が変わってくるのでここまで。

 

 今回はこちら側のユーザーだが、相手ユーザーが押印しないと目も当てられない。

   

 修理車両はこちらのユーザーであっても「支払いがない?相手に請求してくれ」とか、平気でいう人がいるから困る。

 「相手に請求出来るのはあなただけですから、当方はあなたにしか請求できないんです」、と言っても支払ってくれない。自分は被害者だと思っているから。

 

    だから(被害者であっても)依頼者に請求出来るよう、担保してもらう。

 

 何度も書くが、保険会社は和解契約書に押印がないと絶対に支払わない。

 それを保険会社の『保身』と考えれば、御社も『保身』をしておかなければならないということ。

 どこのだれかわからない事故相手に売掛など出来るものではないし。

 

 示談が済めば支払いは保険会社(相手)から修理を依頼した人に行われるから、一旦立て替え払いしてもらう、という形をとるだけ。

 

 ユーザーは、御社に全額の支払いを済ませてから相手(あるいは保険会社)とゆっくりと、いつまでも過失割合を争えばいい。

 

 支払ってもらえないのは押印しない本人なんだから。

 それに御社が巻き込まれることは、これっぽっちもない。

 

 

  ここでの問題は、御社がその請求をユーザーに出せるかどうか。

 過失割合を待つのも、また、待たずにユーザーに請求を上げるのも御社次第。

 

   ※こういう対応は、あくまでも当時の個人的な経験談で、文章の拙さもあり、法律や保険のシステムなどは言葉尻一つ違えば答えの変わることが珍しくない。したがって、今、それが有効かどうか、また、通用するかどうかも不明なのであくまでも参考としてもらいたい。内容については一切責任は持たない。