整備士が知らない…かもしれない整備工場の苦情相談担当者の『ひ・と・り・ご・と』

整備士が整備工場で勉強しようと思っても出来ない整備に関わるユーザーからの苦情、整備工場からの相談を綴ります。法律的なところは専門家ではないので鵜呑みにせず参考程度に。古い話で記憶もあやふやですが自分の笑える失敗話や整備の話もほんの少し。依頼があれば事例内容を紹介する講習会もやります。実例を知ってトラブルを防止しましょう。

パワハラと指導とコミケ

 

 弊社従業員は8人。内、整備従事者は4人(工場長の私、検査員38歳、熟練2級整備士33歳、新人2級整備士25歳)。

 

    今朝、社長が「新人が会社を辞める」と伝えてきた。理由は、検査員からのパワハラだと。

     パワハラ

   

    新人曰く

        ・1年ほど前から叩かれたり蹴られたりされていた。

        ・新人から検査員に何度も「止めてください」といっていた。

 

    しかし、これらが止まることはなく、精神的に追い詰められ、心療内科に通い、カウンセリングを受け、医師から「しばらく休むように」と言われて診断書を見せ、今回の退職願提出になったと。

 

    社長も私も3人が常にふざけ合っているのは知っていた。

    しかし、その様子はとてもパワハラには見えず、むしろ3人がすごく仲良くやってくれていると思い、気にもしていなかった。

    もちろん、病院に通院していた事実も知らなかった。

 

    キッカケは、私にすれば「え!それが?」というくらい些細なこと…そう『私』だと。

 

 

    退職願を提出する数日前、新人は私と共同作業をしていた。

    そのとき、新人が作業手順を違え、ケガをしそうになったので強めに指導(決して叱責ではない)したのだが、そのことを社長に話し、「今までも工場長から数々の言葉の暴力を受けていた」と言ったらしい。

   

    私が普段、声を荒げるようなことはない。

    それは社長もよく知っている。

    言い方がキツかったのは緊急性があり危険を伴ったからで、新人のために、というだけでなく、新人が先輩となり後輩を指導するときも怪我をしないよう、そうあって欲しいと願う親心もあってのやむを得ない措置だったと自負している。

 

    ハラスメントは、された側がそう感じ、そう捉えたら成立してしまうというのは知っている。

    セクハラ、アカハラ、マタハラ、スモハラ、なんでも同じだ。

 

    だからといって、ケガに繋がる可能性があれば看過出来ないし、声も大きく、ある程度強い目の言い方にもなる。

    それがパワハラになるなら、けがをするのを黙って見逃せということに繋がる。

    ここが理解できない。

 

    新人が今までのいきさつから検査員をパワハラで訴えた場合、会社としても何らかの責を負うことになるのだろうか?

 

    今、新人は社長と連絡(メール)は取るが、我々が連絡すると、それすらパワハラだと言うらしい。

    謝罪すべきところは謝罪しようと思うが、それも受け入れない。

 

 

 

    新人が私にもパワハラだと言うのは、検査員との積もり積もった不満で会社を辞めたいがためのいいわけではないかと思う。

    大きな会社ではないが、私と新人はそれほど接点もない。

 

    検査員の行為が事実で、今までカウンセリングを受けているのなら、そのことは問題があるかもしれないし、是正も必要だと思う。

 

    新人は、検査員から受けたパワハラ行為をすべてボイスレコーダー(いつからか、事実かどうかも不明)にため込んでいるという。

    精神的苦痛に対する損害を慰謝料として請求するとも言っている。

 

    社長は検査員と私と新人の3人とともに話合いの場を持とうと努力するが、今は「作業中に怒った工場長がこわい」といい、検査員も謝罪すると社長から伝えているが、応じない。

   

 いろいろ考えていてふと思ったがボイスレコーダーにこそこそ録音するのは違法ではないのか?

 

中小企業のM&A駆け込み寺|事業承継M&Aプラットフォーム【ビズリーチ・サクシード】

 

    裁判等になると録音されたものが参考になることはある。したがって録音そのものに違法性はないようだ。ただ、それをネットやSNSなどで広く公開すると問題になる。

 

    新人には奥さんと子どもがおり、その奥さんの親が弁護士(事実確認はしていない)だというので「最初から訴訟をする気で録音を入れ知恵をされたのではないか?」とも思っている。

 

    入社当時、『給料が安い』と不平不満を言っており、社長に直談判したこともあるとか。

 

   工場長は「録音されていたとしても私の言動がパワハラに該当するとは思えないし、仕事上、きつい言い方をしても後々までこちらが引きずった覚えもない」と。

 

   仮に慰謝料の請求があれば、思い当たる落ち度がないことから、損得勘定を無視して勝ち負けを優先したい。それくらい、こちらにも怒りが込み上げてきた。

 

   新人からの連絡は社長にしか入らないので、社長もけっして線の細い方ではないが、今は社長がそれを気に病み、会社を休んでいる。

 

 話はここでいったん途切れた。

    

 後日、工場長から解決の連絡があった。

  ・新人の嫁の親が弁護士というのはうそ。

  ・ボイスレコーダーの録音も嘘。

  ・カウンセリングは本当。

  ・前の会社を辞めたのも同じ理由(パワハラ云々という流れ)、同じ辞め方。

 

 これらのことから慰謝料ではなく、5年未満の勤務期間ながら、退職金名目で幾ばくかのお金(手切れ金)を渡し解決を図った、という。

 現在は連絡もなく、社長の心の傷も癒えてきた、とのこと。

 

    採用時に、前の会社を辞めた理由は聞く。

 しかし、とにかく人手が欲しい今、売り手市場なので深く追及せずに採用した点は反省材料だ。

    嘘があれば信頼は根本から揺らぎ、元々ある社内の人間関係も崩れてしまう。

 

    「こんなことが起きると前の会社からも情報を得ないと、と思ってしまう」とはこの件での工場長からの最後の報告となった。